民法 物権 6章 地役権 291条~294条
291条(地役権の消滅時効)
第166条第2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
趣旨
地役権は所有権以外の財産権に該当する。よって地役権の消滅時効は「行使しないときから20年」となるが、本条では以下の2つの起算点を規定している。
1、継続的ではない行使(盆や正月のみの使用)→この場合は最後に行使した時点
2、継続的にされる行使(通勤により毎日使用)→この場合は道の損壊や流水などで、使用できなくなった時点
292条
要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。
趣旨
例えば、ABが共有する土地に隣接する土地に通行地役権を設定して正月だけ二人で使用している。この場合、AB共に正月に使用してから19年使用がなかった。あと1年でこの地役権は消滅してしまうが、その年の盆にAが使用した。Bはその後も使用がなく、Bは20年間使用がないことが確定した。この場合、Bの権利だけ消滅してしまいそうだが、共有者のAが盆に使用したことにより、この消滅時効は更新され、その効果は共有者Bにも及ぶ。共有者がいる場合の地役権に関する取得時効が「相対効」であるのに対し、消滅時効は「絶対効」であるため、取得時効はハードルが低く(成立しやすい)、消滅時効はハードルが高い(成立しにくい)という性質がある。
293条
地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。
趣旨
例えば、ABが共有する土地に隣接する土地にABそれぞれ1か所ずつ地役権を設定している場合で、Aの通路をC、Bの通路をDとする。しかし設定後、AもBもC通路ばかり使用して、D通路は全く使用していない。その状態が20年続いたら、C通路の権利は残るが、D通路の権利は時効により消滅するということになる。
294条(共有の性質を有しない入会権)
共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。
趣旨
「共有の性質のない入会権」は慣習優先だが、慣習がない場合は、地役権の性質に類似すると解されいるため、「地役権」の条文が使われる。
「共有の性質がある入会権」も慣習優先だが、慣習がない場合は、共有の性質を持つため、「共有」の条文が使われる。
(263条)
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