民法 総則 2章 人 14条~16条

TY24

2019年12月03日 10:57

14条(保佐開始の審判の取消し)
第11条本文に規定する原因が消滅した時は、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、又は検察官の請求により保佐開始の審判を取り消さなければならない。
②家庭裁判所は前項に規定する者の請求により、前条第2項の審判又は全部又は一部を取り消す事ができる。

趣旨
本項は、保佐開始の審判の取消しについて規定しています。
認知症、知的障害、精神障害などの物事の認識が著しく不十分な原因が消滅した者については、家庭裁判所は、次のいずれかの者の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければなりません。

保佐開始の審判の取消しを請求できる者
本人
配偶者
4親等内の親族
未成年後見人
未成年後見監督人
保佐人
保佐監督人
検察官

2項趣旨
被保佐人にとって、保佐人が必要な原因、つまり認知症、知的障害、精神障害などの物事の認識が著しく不十分な原因が消滅した場合は、すでにその被保佐人を保護する理由はなくなります。このような場合、家庭裁判所は、上記の関係者の申し立てによって、通常の行為能力者と同じ扱いに戻すための手続をしなくてはならなりません。


15条(補助開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、または検察官の請求により、補助開始の審判をする事ができる。ただし、7条、11条本文に規定する原因がある者についてはこの限りでない。
②本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
③補助開始の審判は第17条1項の審判、又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。

趣旨
本項は、補助開始の審判について規定しています。認知症、知的障害、精神障害などによって、物事を認識する能力が不十分な者については、家庭裁判所は、次のいずれかの者の請求により、保佐開始の審判をすることができます。

補助開始の審判を請求できる者
本人
配偶者
4親等内の親族
後見人
後見監督人
保佐人
保佐監督人
検察官

また、ただし書きにより、第7条に規定する原因がある者=被後見人の要件に該当する者については、被補助人より強く保護する必要があるため、後見開始の審判をしなければなりません。
同様に、第11条に規定する原因がある者=被保佐人の要件に該当する者については、被補助人より強く保護する必要があるため、保佐開始の審判をしなければなりません。なお、本条における「事理を弁識する能力」(事理弁識能力)を「意思能力」ということがあります。
認知症、知的障害、精神障害などにより、物事を認識する能力が不十分な者は、物事の判断能力も不十分です。

このような者は、不利な内容の契約を結んでしまわないように、保護されています(第17条第4項参照)。
このため、上記の関係者の申し立てにより、家庭裁判所がその者を被補助人として保護するべきかどうかを決定し、その者を保護する補助人を選任するための審判をします(第16条参照)。

2項趣旨
本項は、補助開始の審判についての本人の同意について規定しています。
本人以外の者の請求により、第15条第1項に規定する補助開始の審判をおこなうためには、本人の同意がなければなりません。
被補助人の要件に該当する者は、「事理を弁識する能力が不十分である者」です。
これは、「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(第7条参照)や「事理を弁識する能力が著しく不十分である者」(第11条参照)と比べると、不十分であっても一定の判断能力があります。
このため、本人の意思を尊重し、本人以外の者の請求による補助開始の審判には、本人の同意を要するものとしています。

3項趣旨
本項は、補助開始の審判と補助人の同意権・代理権の審判の開始について規定しています。
被補助人の行為のうち、補助人の同意を要するものは、被保佐人の行為(第13条第1項各号参照)のように民法で一律に決まっているわけではありません。補助人の同意を要する被保佐人の行為は、第17条第1項の審判により、家庭裁判所が指定します。
また、補助人の代理権については、原則として付与されておらず、例外として、第876条の9第1項により、家庭裁判所が付与することができます。以上のように、補助人の権限を決定するためにおこなわれる、同意を要する行為や代理権の授与の審判は、補助開始の審判とは不可分のものです。

このため、補助開始の審判と同時に、同意を要する行為の決定と代理権の授与の審判もおこなわれます。

16条(被補助人及び補助人)
補助開始の審判を受けた者は被補助人とし、これに補助人を付する。

趣旨
本条は、被補助人に対する補助人の付与について規定しています。
家庭裁判所からの保佐開始の審判を受けた者(第15条第1項参照)は、被補助人となり、これに補助人が付与されます。
補助人は、被補助人を保護する(第17条第1項参照)ために、民法上の権限を与えられる者です。
なお、補助人の代理権については原則として付与されておらず、例外として、家庭裁判所の審判により、被補助人の特定の法律行為についてのみ代理権を付与されることがあります(第876条の9第1項)。




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