民法 総則 2章 人 17条~19条

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2019年12月06日 11:31

17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
家庭裁判所は第15条1項本文に規定する者又は補助人若しくは保持監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただしその審判により同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条1項に規定する行為の一部に限る。

②本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意を得なければならない。

③補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害する恐れがないにもかかわらず同意をしないときは家庭裁判所は被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

④補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意、又はこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消すことができる。

趣旨
本項は、被補助人の行為のうち、補助人の同意を要するものについて規定しています。被補助人の行為のうち、補助人の同意を要するものは、民法では一律に規定されていません。このため、個々の被補助人の状況に応じて、家庭裁判所の審判によって、補助人の同意を要する行為を決定します。なお、この審判は、次の各号の関係者の請求によりおこなわれます。

本人
配偶者
4親等内の親族
後見人
後見監督人
保佐人
保佐監督人
検察官
補助人
補助監督人

本項ただし書きにより、補助人の同意を要する行為は、第13条第1項各号(被保佐人における保佐人の同意を要する行為)の行為の一部に限ります。被補助人は、被保佐人よりも物事を認識する一定の能力があるとされています。このため、補助人の同意を要する行為は、あくまで被保佐人の場合の保佐人の同意を要する行為よりも限定されます。なお、第13条第1項各号の行為以外で補助人の同意を要するようであれば、それはすでに被補助人としてではなく、被保佐人または被後見人として保護するべきです(第15条第1項ただし書き参照)。

2項趣旨
本項は、被補助人の行為のうち、補助人の同意を要するものについての本人の同意について規定しています。本人以外の者の請求により、第17条第1項に規定する補助人の同意を要する行為を決定する審判をおこなうためには、本人の同意がなければなりません。被補助人の要件に該当する者は、「事理を弁識する能力が不十分である者」です。これは、「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(第7条参照)や「事理を弁識する能力が著しく不十分である者」(第11条参照)と比べると、不十分であっても一定の判断能力があります。このため、本人の意思を尊重し、本人以外の者の請求による補助人の同意を要する行為を決定する審判には、本人の同意を要するものとしています。(被補助人に関しては本人の同意が必要)

3項趣旨
本項は、被補助人の行為のうち、補助人の同意を要するものにつき、補助人が同意しない場合について規定しています。補助人には、被補助人を保護するために、被補助人の行為に対する同意権が与えられています。ただ、補助人が被補助人の行為に同意しないことにより、かえって被補助人の利益を害する可能性もあります。このため、補助人の同意を得なければならない被補助人の行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができます。

4項趣旨
前項に規定した条件を満たさずにした法律行為は取り消すことができる
本項は、物事の認識が不十分な被補助人を保護するための、具体的な条文になります。


18条(補助開始の審判の取消し)
第15条第1項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人、又は検察官の請求により補助開始の審判を取り消さなければならない。

②家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第1項の審判の全部、又は一部を取り消すことができる。

③前条第1項の審判及び第876条の9第1項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は補助開始の審判を取り消さなければならない。

趣旨
本項は、補助開始の審判の取消しについて規定しています。

認知症、知的障害、精神障害などの物事の認識が不十分な原因が消滅した者については、家庭裁判所は、次のいずれかの者の請求により、補助開始の審判を取り消さなければなりません。

本人
配偶者
4親等内の親族
未成年後見人
未成年後見監督人
補助人
補助監督人
検察官

被補助人にとって、補助人が必要な原因、つまり認知症、知的障害、精神障害などの物事の認識が著しく不十分な原因が消滅した場合は、すでにその被補助人を保護する理由はなくなります。このような場合、家庭裁判所は、上記の関係者の申し立てによって、通常の行為能力者と同じ扱いに戻すための手続をしなくてはならなりません。

2項趣旨
本項は、第17条第1項にもとづく家庭裁判所の審判の審判の取消しについて規定しています。第17条第1項により、補助人の同意を要するものとされた行為についても、次のいずれかの者の請求により、その全部または一部を取消すことができます。請求できる者は前項と同じ

3項趣旨
本項は、第17条第1項の審判および第876条の9第1項の審判の取消しによる補助開始の審判の取消しについて規定しています。第17条第1項の審判および第876条の9第1項の審判は、補助開始の審判と一体として同時におこなわなければなりません(第15条第3項)。これは、第17条第1項の審判により補助人の同意を要する行為を決定し、第876条の9第1項の審判により補助人の代理権を決定するからです。これらの双方の審判すべてを取り消すということは、すでに被補助人としての補助を受ける必要がないということです。このため、これらの双方の審判すべてを取り消した場合は、家庭裁判所は、補助開始の審判も取り消さなければなりません。


19条(審判相互の関係
後見開始の審判をする場合において、本人が、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所はその本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。

②前項の規定は保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人、若しくは被補助人であるとき、又は補助開始のの審判をする場合において本人が成年被後見人、若しくは被保佐人であるときにについて準用する。

趣旨
本項は、制限行為能力に関する審判の相互の優劣関係について規定しています。後見開始の審判(第7条参照)をおこなう場合、本人が被保佐人(第11条参照)、または被補助人(第15条第1項参照)であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消さなければなりません。というのも、後見開始の審判を開始した場合、類似する保佐開始の審判や補助開始の審判とと同時に後見開始の審判をすることはできないからです。本項の制度により、成年被後見人と被保佐人・被補助人の地位を兼ねることはできません。
以上のように、家庭裁判所は、後見開始の審判があった場合は、保佐開始の審判や補助開始の審判を取り消さなければなりません。

症状が進行した場合の規定である
本項は、もともと認知症、知的障害、精神障害などにより、物事を認識する能力が著しく不十分または不十分であった被保佐人や被補助人の症状がより進行し、物事の認識ができなくなるようになった場合を想定しています。

2項趣旨
後見、保佐、補助は類似性があるため、兼ねることができない。よって、いずれかの開始の審判をするにあたってはすでに受けている開始の審判を取り消してからでないと新たな開始の審判は始めることができないと規定している。




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