336条(一般の先取特権の対抗力)
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
趣旨
一般の先取特権は登記がなくても特別担保がない債権者より先に債権回収ができるが、特別担保がある債権者よりは後になる。
337条(不動産保存の先取特権の登記)
不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
趣旨
例えば、AがBに建物の修繕(外壁塗装等)を依頼して、Aに対して先取特権を行使するならすぐにその旨を登記しなければ先取特権を行使できない。
338条(不動産工事の先取特権の登記)
不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
②工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
趣旨
不動産工事に関する先取特権は、工事を開始する前に決めた予算額を登記しなければ先取特権を行使できない。この場合、その先取特権の効力はその予算額が上限となる。
2項趣旨
工事によってその不動産価格が増加する場合、その額の算定は、競売の時に裁判所が選任した鑑定士によるものでなければならないと規定されている。
339条(登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権)
前2条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
趣旨
不動産保存の工事をした後すぐに登記をした場合や工事前に予算額をあらかじめ登記した場合は、他の債権者の抵当権よりも先取特権が強くなる。
340条(不動産売買の先取特権の登記)
不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
趣旨
不動産売買で先取特権を行使する場合は、その不動産の代金や利息が未払いであることを契約と同時に登記しなければ先取特権を行使できない。
341条(抵当権に関する規定の準用)
先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。
趣旨
先取特権は、債務者の財産から債権を回収するという点で類似する性質があることから、抵当権の規定を使う場合がある。