398条の14(根抵当権の共有)
根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
②根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第398条の12第1項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
趣旨
根抵当権を共有する場合は、根抵当権の共有者が持つ債権額の割合に応じて回収額も決まる。ただし、元本確定前に特別の契約があればその内容に従う。例えば、A社の土地に9000万の根抵当権を共有するB銀行とC銀行がいて、B銀行の債権は8000万、C銀行の債権額は4000万だとすると、9000万に対して2対1の割合になるため、回収額はBが6000万、Cが3000万となる。しかし、特別な契約で「1対1の割合で弁済を受ける」や「C銀行が先に弁済を受ける」などの特約がある場合は、それに従う。
2項趣旨
共有する根抵当権を譲渡する場合は、根抵当権設定者と共有者の同意を得なければならない。
398条の15(抵当権の順位の譲渡又は放棄と根抵当権の譲渡又は一部譲渡)
抵当権の順位の譲渡又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡又は放棄の利益を受ける。
趣旨
例えば、A社の土地にB銀行が抵当権(1番抵当)を持っている。その後C銀行が根抵当権(2番抵当)を持った。その後、B銀行がC銀行に順位を譲渡したため、Cの根抵当権が1番抵当となり、Bの抵当権が2番抵当となる。その後C銀行はD銀行にその根抵当権を譲渡した。この場合でも、Dの根抵当権は順位譲渡の利益を受け継いでそのまま1番抵当となる。
398条の16(共同根抵当)
第392条及び第393条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。
趣旨
一つの債権に複数の不動産に根抵当権を付けて担保することを「共同根抵当」というが、それは登記をしなければ効力を有しない。
398条の17(共同根抵当の変更等)
前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。
②前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、1個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。
趣旨
共同根抵当の変更事項はすべて登記をしないと効力は生じない。
2項趣旨
共同根抵当の一つでも元本の確定があれば全体の元本が確定したことになる。
398条の18(累積根抵当)
数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。
趣旨
例えば、A社所有のB土地に5000万、C土地に3000万の根抵当権を持つD銀行は、その共同根抵当の登記をしなかった。そのため、D銀行は、二つを合わせた極度額の8000万円までは優先的に弁済を受けることができる。