268条(地上権の存続期間)
設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは、1年前に予告をし、又は期限の到来していない1年分の地代を支払わなければならない。
② 地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、20年以上50年以下の範囲内において、工作物
又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。
趣旨
地上権者は所有者と特に権利を持つ期間を決めていなかった場合はいつでもその権利を以放棄することができるが、土地の使用料を支払っている場合は、以下の2つの条件を履行すれば、地上権を放棄することができる。
1、今から1年後に土地の使用を終了する(地上権の放棄)旨を所有者に対して意思表示をする。
2、土地の使用を終了する前に、1年分の使用料を支払う。
2項趣旨
例えば、AがB所有の土地に期間の定めのない地上権を設定して使用しているが、Bは諸事由により契約期間を決めたくなった。しかしAがその請求に応じない場合、Bは裁判所に期間を定めるよう決めてほしいという申し立てをすれば、裁判所は、いろいろな状況を考慮して、20年~50年の間で存続期間を決定することができる。
269条(工作物の収去等)
地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる。ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。
②前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
趣旨
例えば、AがBの土地に地上権を設定して建物を建て使用していたが、契約期間満了により、地上権が消滅したため、Aはその建物を取り壊して(原状回復)土地を返還することができる。「ことができる」という表現は義務ではない。(取り壊さなければならないわけではない)ただし、Bがその建物を時価で買い取ると言ってきた場合は、正当な理由がなければAはこの申し出を拒むことはできない。
2項趣旨
前項例えに従えば、その地域に「地上権が消滅した場合は更地にして返還しなければならない」という慣習があれば、本法ではなく、その慣習が優先適用されることになるため、Bがその建物を買い取ることはできないと解される。
269条の2(地下又は空間を目的とする地上権)
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
②前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げる
ことができない。
趣旨
地上権は、上空のみ、地下のみに権利を設定することができる。これを「区分地上権」というが、区分地上権を弊害なく行使するために、その土地の利用を制限することができる。例えば、A社がB所有の土地の地下に地下鉄のトンネルを建設するために、地下の区分地上権を設定した。しかし、地下にトンネルを通すことによりBの土地は地盤が弱くなるため、高層ビルを建てると危険な状態になるのは明白である。したがって、Bの土地に「高層ビルの建設禁止」という制限を設けて地上権を設定することができるのである。
2項趣旨
前項例えに従えば、Bの土地にCが賃借権、Dが永小作権を持っている場合、全員が承諾すればA社はその地下トンネルに対する区分地上権を設定できる。反対解釈をすれば、1人でも反対すれば区分地上権は設定できないことになる。しかし、承諾し、区分地上権が設定されてしまった後に、CとDはそのトンネル工事を妨害するような行為をすることは許されない。