425条の3(受益者の債権の回復)
債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。
趣旨
例えば、AがBに100万円を貸していて、その後BはCからも200万円を借りている。Bは支払い不能となり破産を申し立てた後にAだけに100万円を返済した場合、Cが詐害行為取消請求でAへの返済を取り消したため、Aはその返済してもらった100万円をBに返したらAの100万円の債権は再び復活するということ。
425条の4(詐害行為取消請求を受けた転得者の権利)
債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
1、第425条の2に規定する行為が取り消された場合 ⇒ その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
2、前条に規定する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。) ⇒ その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権
趣旨
例えば、AがBに300万円を貸していて、Bは自己所有の評価額300万の車をCに100万円で売却した。その後CはDにその車を80万円で売却した場合、AはDに対して詐害行為取消請求を申し立て、認容判決が出た。これによりBC間の売買契約が取り消された場合、CがBに対して車の売買代金を返還してもらう権利をDも使うことができるが、Dは80万円で車を購入しているため、その価額が上限となり、80万円を請求できる。
2号趣旨
例えば、AはBに100万円を貸していて、その後BはCからも200万円を借りたが、支払い不能となったため破産を申し立てた。その後BはAだけに自己所有の評価額100万円の車をAに代物弁済した。その後Aはその車をDに80万円で転売した。それを知ったCは詐害行為取消請求でAB間の弁済を取り消した場合、車はBに戻ることになる。そこでDは「AがBから100万円を返してもらう権利」を使ってBに対して車購入代金80万円を請求できる。ただし、もしDがAからその車を120万円で購入していたとしても、Dは「AがBから100万円を返してもらう権利」しか使えないため、100万円の請求しかできない。