第1章 総則
第1節 債権の目的
399条(債権の目的)
債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
趣旨
債権は、約束を履行させるという目的にかかる権利であり、必ずしもお金に関するものだけではない。例えば、Aが隣人Bと「犬を飼うのを禁止する」という約束(契約)をした場合、Bが犬を飼い始めれば、「犬を飼うのを禁止する」という債権を行使して犬を飼うことをやめさせる(債務を履行させる)ことができる。
400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
趣旨
例えば、A(自動車販売店)がBに車を売った場合、その車をBに引き渡すまでは、専門家としてその車を保存する義務(善管注意義務)があるということ。
401条(種類債権)
債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
②前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
趣旨
「種類債権」とは、アボカド1kgとか、ビール1ケースとか種類と量が特定されている債権のこと。(不特定物債権ともいう)この種類債権は、中等の品質を渡さなければならない。例えば、飲食店(債権者)が農家(債務者)と契約をしている場合、アボカド1kg(種類債権)の注文があれば、普通の品質のアボカドを1kg納品しなければならず、普通以下であれば本条の規定に違反する。普通以上の品質であれば問題はない。納品が完了し、支払の場面になると飲食店は債務者となり、農家が債権者となり、立場が逆転する。
2項趣旨
債権の目的物が確定する(種類債権が特定物に変わる)ときは以下の2つ。
1、種類債権の目的物(アボカド1㎏)の準備が完了した。
2、債権者(飲食店)の同意を得て債務者(農家)がアボカドを指定した。