230条
一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。
②高さの異なる2棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。
趣旨
土地の境界線上に壁が存在する場合、その壁がどちらかの建物の一部であった場合は、その建物の所有者の物であると推定される。
2項趣旨
隣り合う2つの高さの違う建物があり、その境界線に低い建物より高い壁が存在している。高い方はA所有、低い方はB所有とする。この場合、Bの建物の高さを超える部分の障壁に関しては、AとBの共有ではなく、Aの所有と推定される。無論、その部分以外の下の部分は共有と推定される。また、例外として、その障壁が防火壁であった場合は、高さに関係なく共有と推定される。
231条(共有の障壁の高さを増す工事)
相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。
②前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。
趣旨
境界線上の共有の障壁はどちらかの所有者が高さを加えることができるが、その増築工事にその壁が耐えられない等の場合は、修繕、補強を加え、増築を行わなければならないが、その費用は自己負担する義務がある。
2項趣旨
障壁を高くした場合、高くなった部分に関しては、共有ではなく、高くした(費用を負担した)者の所有となる。
232条
前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
趣旨
前条の場合において、障壁を高くしたことによって、又は、高くする際の工事により損害を受けた共有者は、補償金を請求する権利を有する。
233条(竹木の枝の切除及び根の切り取り)
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
②隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
趣旨
隣の土地の木の枝が境界線を越えて自分の土地に入っていても、所有者に無断で自分でその枝をきることはできないが、その木の所有者に枝を切るよう請求することはできる。また、その木の根っこが自分の土地に入ってきた場合、これは所有者に無断で自分で切除することができる。
234条(境界線付近の建築の制限)
建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
② 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
趣旨
建物を建てる場合、土地の境界線から50cm以上離す必要がある。例外として、防火地域内か準防火地域内に、鉄筋コンクリートなどの
耐火建築物を建てる場合は、土地の境界線上に建てることができる。(建築基準法65条)
2項趣旨
隣の土地の所有者が境界線から50cm以内のところに建物を建築しようとしている場合、その工事を中止又は変更をさせることができる。ただし、その工事が始まってから1年以上経過している場合や、その建物が完成してしまった場合は、損害賠償請求のみを行うことができる。