民法 物権 3章 所有権 261条~264条

TY24

2020年04月21日 19:24

261条(分割における共有者の担保責任)
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。

趣旨
例えば、ABCの3人で共有していた土地を3人で均等に分割した。その後、Aの取得した部分に産業廃棄物が埋まっているという瑕疵が発見され、その撤去に60万円かかった。この場合、もともと3人で共有していた土地なので、AはBとCに対して撤去費用を損害賠償として請求することができる。割合は平等に一人あたり20万円となるため、Bに20万、Cに20万の計40万を二人に請求できることになる。これは売買契約の際にその売り物に瑕疵があった場合、その瑕疵に対して売り主が負う担保責任と同様である。


262条(共有物に関する証書)
分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。

②共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。

③前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。

④証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。

趣旨
ABCの3人でDから土地を購入し、その土地を3人で分割した場合、それぞれその土地を取得したことが証明できる書類を保存しておく義務がある。この場合、固定資産税の納税証明書や、Dから土地を購入した際の売買契約書などが「証書」に該当する。

2項趣旨
分割の割合がバラバラだった場合、一番大きい割合を取得した者がその証書を保存する義務がある。

3項趣旨
分割の割合がバラバラであった場合は、一番大きい割合を取得した者が証書を保存する義務があるのに対し、分割の割合が均等であった場合は、共有者間の協議で保存者を決めなければならないが、協議で話がまとまらない場合は、裁判所が保存者を決めることができる。

4項趣旨
証書の保存者ではない共有者が裁判やトラブル解決のためにその証書が必要な場合、保存者はその使用を拒むことはできない。


263条(共有の性質を有する入会権)
共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。

趣旨
例えば、「A村のB山に生えているキノコはA村の住民であれば収穫してもよい」という権利のことを入会権(いりあいけん)というが、これは性質上、A村の所有するB山のキノコをA村の住民全員で共有している状態ということができるため、その村の慣習と本法第3章「所有権」の第3節「共有」の条文を適用することができる。ちなみに「共有の性質を有しない入会権」も存在するが、これは本法294条に規定されており、これは「地役権」に属すると解される。


264条(準共有)
この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

趣旨
ここまでは「所有権の共有」の規定であったが、これは所有権以外の財産権にも準用することができる。所有権以外の財産権には以下の権利があるが、代表的な権利を挙げる。

1、地役権
2、永小作権
3、地上権
4、抵当権
5、特許権

これらの財産権を共有することを「準共有」という。ただし、本法以外に特別な定めがある場合(特別法)はその法の規定が優先される。例えば、特許権を複数人で準共有する場合は、「特許法」が存在するため、特許法の規定が優先される。民法から見て特許法は特別法となる。





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