民法 物権 5章 永小作権 270条~279条

5章 永小作権

270条(永小作権の内容)
永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。

趣旨
永小作権と使って他人の土地でできることは以下の2つ。

1、耕作(畑や田んぼで野菜や果物、穀物を作る)
2、牧畜(牛や豚、鶏などの家畜や馬や羊を飼育する)

永小作権は地上権と違い、有料が条件となる。現代では借地権を設定することが多く、永小作権を使うことは少ない。


271条(永小作人による土地の変更の制限)
永小作人は、土地に対して、回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができない。

趣旨
例えると、Aの畑を借りている永小作権者のBはその畑を元に戻せないことを知りながら田んぼに変えるようなことすることは許されない。


272条(永小作権の譲渡又は土地の賃貸)
永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。

趣旨
永小作権者はその権利を設定期間内であれば、他人に譲渡(売る、あげる)や賃貸することができるが、設定時の契約内容に、それらを禁止する旨の定めがあれば、本法ではなく、その定めが優先される。


273条(賃貸借に関する規定の準用)
永小作人の義務については、この章の規定及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。

趣旨
永小作人の義務の規定として、以下の3つがあるが、永小作権は賃貸借に性質が類似することから、賃貸借に関する条文が準用される。

1、民法第2編第5章の条文にある義務(270~279条)
2、永小作権を設定する際に、当事者間の契約で定めた義務
3、賃貸借に関する条文にある義務(601~622条)


274条(小作料の減免)
永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。

趣旨
台風や異常気象などで作物が収穫できず、収入がなかったとしても、土地の所有者に支払う小作料の減額や免除を請求することはできない。


275条(永小作権の放棄)
永小作人は、不可抗力によって、引き続き3年以上全く収益を得ず、又は5年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。

趣旨
台風や異常気象、その他の不可抗力により、以下の2つの状況に該当すれば、永小作人はその権利を放棄することができる。

1、3年連続で利益がゼロ
2、5年以上利益よりも小作料の方が高い


276条(永小作権の消滅請求)
永小作人が引き続き2年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。

趣旨
永小作人が、2年以上連続で小作料の支払いをしなかった場合、その土地の所有者は、その権利の消滅を請求することができる。


277条(永小作権に関する慣習)
第271条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

趣旨
その地域に、永小作権に関する条文と異なる慣習がある場合は、その慣習が優先される。例えば、「天災等で利益がない場合は小作料を免除する」という慣習があれば、本法の規定は適用されず、小作料は免除となる。


278条(永小作権の存続期間)
永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。

②永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から50年を超えることができない。

③設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、30年とする。

趣旨
永小作権が設定できる期間は民法では20年~50年であり、契約で50年以上の設定をしたとしても、50年を超えることは許されないが、その場合は更新をすればよい。ただし、更新の際も設定期間を50年以上にすることはできない。(50年縛り)そして、期間を定めのない設定は30年とされるが、その地域に「定めのない設定は20年とする」という慣習があれば、その慣習が優先され、20年となる。


279条(工作物の収去等)
第269条の規定は、永小作権について準用する。

趣旨
地上権と同じ(269条)

民法 物権 5章 永小作権 270条~279条


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