第6章 地役権
280条(地役権の内容)
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第3章第1節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
趣旨
自分の土地を使用するための利便性を得るために他人の土地を使用できる権利のことを地役権というが、本法210条、214条に違反しない範囲でなければならない。地役権には主に以下の2つなどがある。
1、公道に出るために他人の土地を通る権利(通行地役権)
2、他人の土地から自分の土地に水を引く権利(用水地役権)
注 地役権は他にも多数ある
利便を受ける方の土地を「要役地」、利便を承諾(与える)方の土地を「承役地」という。
281条(地役権の付従性)
地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
② 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
趣旨
地役権は、所有権に「従たるもの」であるため、基本的にはこの2つの権利はセットと考えられている。したがって、Aが地役権付きの土地をBに売却した場合、所有権と一緒に地役権もBに移転する。また、Aがその土地を担保にお金を借りて抵当権が設定されれば、債権者が抵当権を行使する際に地役権も一緒に競売にかけられることになる。しかし、契約(設定)の際に「地役権は所有権と一緒に移転しない」という特約があれば、その特約が優先される。
2項趣旨
地役権だけに抵当権を設定したり、地役権だけを他人に売ったりすることはできない。
282条(地役権の不可分性)
土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。
② 土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。
趣旨
例えば、AとBが共有する土地があり、隣接するCの土地に通行地役権を設定している。この場合、Aは「Cの土地を通ることはないから、自分の持分の地役権は無くしてくれ」ということはできない。
2項趣旨
地役権が付いている土地を分割、又は一部を譲渡した場合、基本的にはどちらの土地にも地役権が付く。ただし、前項例の場合でいえば、AとBが共有していた土地を分割した場合には、Aの地役権を消滅させることができる。
283条(地役権の時効取得)
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
趣旨
地役権は、設定していない場合でも、以下の2つの条件をどちらも満たしていれば時効により取得する。
1、継続的に行使されている(定期的にその土地を通行している)
2、外形上認識できる(誰が見ても通路だとわかる)
その土地を通行している者が善意無過失(他人の土地だと知らず、知らなかったことに落ち度がない)の場合、上記の状態が10年以上続いていれば地役権を取得する。また、悪意(他人の土地であることを知っていた)の場合は、20年以上上記の状態が続いていれば地役権を取得する。