286条(承役地の所有者の工作物の設置義務等)
設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。
趣旨
「AがBの土地を通る」という地役権を設定し、Bが費用を負担してAが通るための通路を作り、その通路の修繕をするという契約をした後にBはその土地をCに売却した。この場合、Cは特定承継人となり、Bが作った通路の修繕義務を負わなければならない。
287条
承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。
趣旨
前条の例を引用すると、承役地の所有者となったCは通路部分の土地の所有権を放棄してAに移転すれば、修繕義務を負わなくてもよくなる。これに期間の定めはなく、いつでもすることができる。
288条(承役地の所有者の工作物の使用)
承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる。
②前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
趣旨
「AがBの土地を通る」という地役権が設定された場合、BはAの邪魔にならない範囲でその通路を使用することができる。
2項趣旨
前項の場合において、AとBで使用する割合により、その通路を作る際にかかった費用と保存のための費用を分担しなければならない。例えば、通路開設にかかった費用が10万円で、使用の割合がA80%、B20%であれば、Aは8万円、Bは2万円を負担する義務がある。
289条(承役地の時効取得による地役権の消滅)
承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。
趣旨
「AがBの土地を通る」という地役権が設定されているB所有の土地にCが占有を開始した。それから何事もなく10年が経過したところ、Cは善意であったため、土地の所有権はBからCに移転した。この場合、所有権が移転した時点でAの地役権は消滅し、Cに対して対抗することができなくなる。
290条
前条の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。
趣旨
前条の例でいえば、「AがBの土地を通る」という地役権を行使すれば、地役権の消滅時効、及びCの占有による所有権の取得時効は中断する。要するに、AがBの土地を通り続けていれば、どちらの時効も進まないということ。