民法 物権 7章 留置権 298条~302条

298条(留置権者による留置物の保管等)
留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

②留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

③ 留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

趣旨
Aの車の修理を請負ったBは車修理の専門家であるため、その留置物(車)を専門家として保管する義務(善管注意義務)がある。

2項趣旨
Aの車の修理を請負ったBはその留置物(車)をAの承諾なしに他人に貸したり、自分の私用で使ったり、自分の債務のための担保にすることはできない。ただし、車の修理が完了し、その故障が直っているかをチェックするために走行する等の行為はAの承諾なしでも問題ない。

3項趣旨
留置権者が、次の2つのどちらかをした場合は、債務者は、留置権の消滅を請求して、預けていた物を返すように言える。

1、善管注意義務に違反(ずさんな保管だった)
2、 債務者の承諾がないのに、留置物を使ったり、貸したり、担保にした


299条(留置権者による費用の償還請求)
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。

②留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した
金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

趣旨
Aの車の修理を請負ったBはAの支払いがないので、その車を留置している。留置している間に、その車の車検の期限が来たため、Bは車検費用を立て替え、車検を通した。この車検代をAに請求できるということ。(あたりまえのこと)

2項趣旨
前項例を引用すると、Bはその車のボディーが錆びていたため、錆を落とし、塗装を施した。その塗装に10万円かかり、車の評価額は8万円アップした。この場合、Bはその費用をAに請求することができるが、Aは塗装代10万を払うか、評価額が上がった分の8万を払うか、どちらか1つを選ぶ権利がある。ただし、Aの請求があれば、裁判所はその支払い時期を遅くすることができる。


300条(留置権の行使と債権の消滅時効)
留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。

趣旨
Aの車の修理を請負ったBはAの支払いがないので、その車を留置しているが、その間でもBは、修理代を請求せず、放置すれば時期が来ると消滅してしまうことになる。


301条(担保の供与による留置権の消滅)
債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。

趣旨
債務者は、別の物を担保として提供すれば、留置権の消滅を請求できる。例えば、Aの車の修理を請負ったBはAの支払いがないので、その車を留置している場合、車が必要になったため、車を返してほしいが今は修理代の持ち合わせがない。こういった場合は、修理代に相当するような物(担保)(例えば、腕時計など)をBに渡せば、車に対するBの留置権は消滅し、車を返してもらうことができる。


302条(占有の喪失による留置権の消滅)
留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第298条第2項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。

趣旨
Aの車の修理を請負ったBはAの支払いがないので、その車を留置している場合、工場に泥棒が入り、Aの車が盗まれてしまった場合、Bの留置権は消滅してしまう。しかし、その泥棒が見つかり、車が戻ってきたら留置権は復活する。ただし、Aの承諾を得てその車を貸したり質屋に入れたりした場合は、占有を失った状態ではあるが、留置権は消滅しない。

民法 物権 7章 留置権 298条~302条


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