民法 債権 1章 総則 432条~435条の2

TY24

2020年05月28日 10:02

第3款 連帯債権

432条(連帯債権者による履行の請求等)
債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

趣旨
一人の者に複数の者が共同で債権を有している場合の規定

例えば、ABCの3人が共同でDに100万円を貸している場合、Aが返済の請求をすれば、時効の完成が猶予されたり更新されたりする効力はBとCにも及ぶ。また、DがAに100万円を返した場合、BとCにも返したことになる。これを「絶対的効力」という。


433条(連帯債権者の1人との間の更改又は免除)
連帯債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。

趣旨
例えば、ABCの3人が共同でDに120万円を貸している場合、ABCは内部割合(自分が受け取る金額の割合)を1人40万円と決めていた。その後Aが自分の取分を免除した。この場合、BとCはAの取分40万円については請求できなくなるため、BCの債権は80万円となる。


434条(連帯債権者の1人との相殺)
債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。

趣旨
例えば、ABCの3人が共同でDに120万円を貸している。Dはその借り入れをする前にAに30万円を貸していたため、Aに対して相殺を援用して自分の債務を90万円にしてもらった。この場合、BとCの債権も90万円になるが、内部割合はAが10万、BCは40万ということ。


435条(連帯債権者の1人との混同)
連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。

趣旨
例えば、ABCの3人が共同でDに120万円を貸している。CとDは親子であるが、返済前にCが死亡したため、Dがその120万円の債権を相続することになった。これでDは自分の債務の債権者になってしまった。これを「混同」というが、この場合は弁済したとみなされるため、その連帯債権は消滅するが、内部割合が1人40万円と決められていれば、DはAとBに40万円ずつ支払うことになる。


435条の2(相対的効力の原則)
第432条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。ただし、他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。

趣旨
432条から435条(履行の請求、更改、免除、相殺、混同)は「絶対的効力」だが、それ以外は原則「相対的効力」であるが、債権者の1人が特別な意思表示をした場合は、その意思に従う。
例えば、ABCの3人が共同でDに120万円を貸している場合、AはDに「返済を1年先送りにする」と言った場合、期間の延長は絶対効ではないため、Aに対しての返済の1年先送りは有効である。また、Bが「AD間の期間延長を認める」という意思表示をした場合、Bに対しても返済の1年先送りは有効である。(Cはその影響を受けない)



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