民法 総則 3章 法人 33条~34条

33条(法人の成立等)
法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ成立しない。

②学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

趣旨
本項は、法人の成立について規定しています。法人は、その成立の根拠となる各種法律の規定がなければ、成立しません。法人は、自然人(いわゆる普通の人間)と同じように、権利や義務を帰属させることができます。このような法人については、その責任の所在、取引をする相手方の保護、第三者との関係が、極めて重要になってきます。このため、法人の意思決定のシステムや、最終的にどこまで責任が及ぶのか、というな点が明確でなければなりません。この点について、各人が勝手に「我々は○○法人です」と宣言しても、その宣言にはまったく信用がおけません。このような宣言が有効となってしまうと、法人制度そのものの意味がなくなってしまいます。そこで、本項により、法律による一定の基準に従って、その基準を満たした場合にのみ法人が成立します。これを「法律準拠主義」といいます。
なお、実際に法人を設立する際は、株式会社であれば会社法、社団法人や財団法人であれば一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、宗教法人であれば宗教法人法というように、それぞれに守るべき法律があります。

2項趣旨
本項は、特別法にもとづく法人について規定しています。学術、技芸、慈善、祭祀、宗教などの、公益を目的とした法人や、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営および管理については、民法とその他の特別の法律が適用されます。具体的には、学校法人については私立学校法、宗教法人については宗教法人法、公益社団法人・公益財団法人については公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、株式会社については会社法、一般社団法人・一般財団法人については一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、NPO法人については特定非営利活動促進法などがあります。


34条(法人の能力)
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

趣旨
本条は、法人の権利能力について規定しています。法人は、法令や法人の根幹となるルールである定款または寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負います。本条により、法人は、あくまで定款や寄付行為で規定した目的の範囲内の権利義務があり、その範囲外については、権利義務がありません。

目的の範囲
目的の範囲については、判例によって、営利法人と非営利法人では、若干解釈が違っています。営利法人の場合、利潤を追求するという営利法人の性格から、目的の範囲は、かなり緩やかに解釈されています。例えば、政治献金でさえ、目的として認められています(最高裁判決昭和45年6月24日・八幡製鉄事件)。非営利法人の場合は、営利法人と比べて、この目的の範囲というのは、厳格に解釈されています。例えば、同じ政治献金にしても、税理士会という非営利法人がおこなった政治献金は、この目的の範囲外とされています(最高裁判決平成8年3月19日)。

民法 総則 3章 法人 33条~34条


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