194条
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
趣旨
盗品又は遺失物が競売(オークション等)や公の市場(古本屋等)、その物と同種の物を販売する商人(フリーマーケット等)で売られている場合があるとする。それを盗品(遺失物)であるとは知らずに買ったA(善意)の家に行ったBは盗まれたその盗品を発見する。これは盗まれた自分の物であることをAに主張しても、無償で返してもらうことはできないが、Aがその物を買った代金を弁償すれば、返還請求をすることができる。
195条(動物の占有による権利の取得)
家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から1ヵ月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
趣旨
いわゆるペットが逃げ出し、それを拾った場合、首輪などがなく、買われていたことがわからない状態(善意)であり、保護してから1カ月以内に元の飼主から返還の請求がない場合は、保護した人の物になる。逆に首輪をしていた場合は、飼われていたことがわかるので、悪意となり、1カ月以上保護していても自分の物にはならない。この場合、そのペットは「遺失物」扱いとなる。
196条(占有者による費用に返還請求)
占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
②占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
趣旨
例えると、A(回復者)が海外出張で家を空けるため、その間B(占有者)が住むことになったが、雨漏りが発生したため、Bは10万円(必要費)を支払い修理した。この場合、BはAに対して必要費の10万円を請求できる。しかし、Bが部屋の一部をCを住ませ、家賃をもらっていた場合は、その10万円を請求することはできない。
なお、台風で大破した屋根の修理といった「特別の必要費」については、Bさんは、Cさんから家賃を受け取ったかどうかに関係なく、Aさんから修理代を受け取ることができる。
2項趣旨
例えると、Aが海外出張で家を空けるため、その間Bが住むことになったが、玄関のドアが壊れていたため、新品に交換した。(20万円)そしてAが帰国したので、Bは家を返したが、玄関ドアが新品になっているので、家の評価額は上がっている。(有益費)この場合、BはAから次のいずれかを償還してもらうことができる。
①ドアの交換費用(20万円)
②家の評価額の増加分(15万円)
どちらにするかはAに選択する権利があるが、この場合Bは他主占有であることを知っているため、「悪意」となるため、Aの請求があれば、裁判所はこの費用の支払い期限を遅くすることができる。逆にBが自分の物と思い込んで、占有していた家であった場合は、善意となるため、この費用の支払い期限を遅らせることはできない。