第3節 占有権の消滅
203条(占有権の消滅事由)
占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
趣旨
占有権が消滅する原因は次の2つ
1、占有者が自分の意思で占有を放棄する
2、占有物の所持を失う(盗まれるなど)
2のケースでは、盗んだ者に対して占有回収の訴えを提起すれば占有権は消滅しない。
204条(代理占有権の消滅事由)
代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
1、本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
2、代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
3、代理人が占有物の所持を失ったこと。
②占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。
趣旨
代理占有権は、Aの土地をBに貸している場合、Bに占有権があるが、Aには所有権とともに代理占有権もある。この代理占有権が消滅する原因の規定であるが、例えると、
1、AがBに「土地を返してくれ」と意思表示をする。
2、BがAに「この土地は今日から自分の物だ」と意思表示をする。
3、BがAに土地を返した。
2項趣旨
1項の例で、AB間で土地の賃貸借契約が結ばれていた場合、契約期間が満了すれば、Bの代理権は消滅するが、その後もBが土地の占有(所持)を続ければ、Bの占有権は消滅しない。
第4節 準占有
205条
この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。
趣旨
財産権は物権ではなく債権であるが、物権に規定されている占有のルールを債権にも同じように使用できると規定している。財産権に関する占有を「準占有」という。例えると、Aの通帳と印鑑をBが盗み、銀行で現金を引き出した場合、BはAの「債権の準占有者」となる。