第2節 所有権の取得
239条(無主物の帰属)
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
② 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
趣旨
所有者のない動産(野生の動物や、海の生き物、捨てられたもの)は所有の意思をもって占有を開始した者の所有物になる。また、所有者がいなくなってしまった、若しくは不明の不動産は国の所有となる。
240条(遺失物の拾得)
遺失物は、遺失物法(平成18年法律第73号)の定めるところに従い公告をした後3ヵ月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
趣旨
落とし物は、遺失物法に基づき、公告をしてから3カ月以内にその物の所有者が現れなければ拾った人の物となる。
241条(埋蔵物の発見)
埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6ヵ月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
趣旨
埋蔵物は、遺失物法に基づき、公告から6カ月以内に所有者が現れなければ発見者の物となる。しかし、発見場所が人の土地であった場合は、その土地の所有者と発見者で半分ずつ分けることになる。
242条(不動産の付合)
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
趣旨
不動産に付合(一体化)したものは、その不動産の所有者の物になる。例えば、Aの土地にBが木を植えても、その木の所有者はAであるが、BがAから土地を借りているときにBが木を植えた場合、Bには賃借権という権原が存在するため、その木はBの所有物となり、果実等を取得する権利があるのはBとなる。
243条(動産の付合)
所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
趣旨
例えば、A所有の車にB所有のグレードの高いマフラーを溶接により装着した。この場合、車が「主物」でマフラーが「従物」となるため、マフラーも含め、Aの所有物となる。また、このマフラーを外さなければいけなくなり、工賃が発生する場合、この工賃はAが負担する義務を負う。
244条
付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
趣旨
A所有の純金のネックレスに、B所有のダイヤモンドを装着し、合作で作品を作った。これが工芸品として高い評価を受けることになった場合、社会通念にもよるが、どちらが主従であるかの判別がむつかしく、その工芸品がどちらの所有物であるかの判別が困難である。こういった場合は、工作前の純金のネックレスと、ダイヤモンドの評価額を基に、その割合に応じてABの共有物となる。
245条(混和)
前2条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。
趣旨
草刈り機の燃料を作るため、A所有のガソリンと、B所有のオイルを混合し、大量の燃料が完成した。ガソリンとオイルの価格はほぼ同じで、主従の区別がつかない。この場合、この燃料は、ABの共有物となる。