246条(加工)
他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
②前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。
趣旨
他人の動産を加工した物の所有権が問題となる場合、原則としてその材料の所有者がその加工物の所有者となるが、加工の技術が高く、その加工物に付加価値などが付き、材料の価格よりも加工後の価格がかなり高くなってしまった場合は、例外として加工者の所有物となる。
2項趣旨
加工する際に使用した材料の価格と加工による付加価値等の増額分を合計すると元の材料の価格より高くなる場合の所有権は加工者となる。
247条(付合、混和又は加工の効果)
第242条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
②前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。
趣旨
付合、混和、加工により所有権が移動する場合がある。その場合、失う側の所有権に付随して存在していた他の権利(質権や留置権等)は所有権と一緒に消滅する。つまり、新しい所有者に対してその物に付随していた質権や留置権を行使することはできなくなるということ。
2項趣旨
付合、混和、加工により、所有者が単独になった場合、(所有権が元の材料の時から移らなかった場合)材料に帰属していた所有権は、合成物に帰属する事となる。よって、材料にかけられている他の権利(質権や留置権)は以後、合成物(完成品)に対して効力を有することになる。そして、付合、混和、加工により、共有物となった場合は、材料時代にかけられていた他の権利は当人の持ち分に対して効力を有する事となる。
248条(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)
第242条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第703条及び第704条の規定に従い、その償金を請求することができる。
趣旨
前条で「失う側の所有権は消滅し、それに付随する他の権利も一緒に消滅する」という説明があるが、本条では、この状態の不利益を救済するための規定である。例えば、その消滅した所有権の対象物に対して質権を設定している場合、一緒に質権も消滅した場合、質権の権利者は不利益を被ることになる。こういった場合に本条を使用し、所有権を取得した者に対して703条、704条(不当利得)の規定に従い、償金を請求する権利が発生する。つまり、所有権が移動したことによって消滅したかのように見えた質権は不当利得返還請求権に代わるというイメージになる。(物上代位)