民法 物権 9章 質権 342条~348条

第9章 質権

第1節 総則

342条(質権の内容)
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

趣旨
質権を有する者は、預かっている物から自分の債権を回収できる権利。質権は、その預かっている物については、他の債権者より先に債権を回収する権利を有する。


343条(質権の目的)
質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。

趣旨
法律で所持自体を禁止されている物(麻薬、覚せい剤、偽札等)に質権を付けることはできない。


344条(質権の設定)
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

趣旨
質権は、その目的物を債権者に「占有」させなければ、効力が発生しない。対して抵当権は、占有がなくても登記があれば効力が発生する。


345条(質権設定者による代理占有の禁止)
質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。

趣旨
質権は、代理占有(181条)を使うことはできない。性質的に質に入れたことにならないから。しかし、第三者に預かってもらうことは可能である。


346条(質権の被担保債権の範囲)
質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

趣旨
質権を行使して回収できる債権は以下の7つ。

1、元本
2、利息
3、違約金
4、質権の実行費用
5、質物の保存費用
6、債務不履行による損害賠償
7、質物の瑕疵による損害賠償

例外として、契約時に上記以外の規定があれば、その契約内容が優先される。


347条(質物の留置)
質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない。

趣旨
質権を有する者は、前条の7つの債権を回収するまで質物を留置(手元に置いておく)ことができるが、その質物に別の権利がついていた場合、その権利が自分のもつ質権よりも優先権が強いもの(先取特権等)であれば、その質物を渡さなくてはならない。ただし、その質物が競売にかけられた場合、その代金から優先順位の順にしたがって弁済を受けることはできる。


348条(転質)
質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。

趣旨
転質とは、質物を更に別の質屋に入れること。
質権者はその権利がある間は、質物を更に質に入れることができるが、その際に、破損や紛失により損害が出た場合は、それが不可抗力(人の力ではどうにもならない)であってもその損害を賠償する義務を負う。

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