民法 物権 9章 質権 352条~355条

第2節 動産質

352条(動産質の対抗要件)
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

趣旨
動産に質権を有する者は、継続してその質物を占有することが第三者への対抗要件である。その動産に他の権利を有する者(第三者)が自分の権利を主張してきた場合、占有している状態が続いている事実がなければその第三者に自分が質権を持っていることを主張しても認められないということ。


353条(質物の占有の回復)
動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

趣旨
例えば、Aがバッグを担保にBからお金を借りた。その後、Bが占有するそのバッグがCに盗まれた場合、BがCからバッグを取り返すには「占有回収の訴え」を提起すること以外にバッグを取り返す方法はないということ。なお、Bがそのバッグをなくしたり、騙されて他人にそのバッグを渡してしまった場合には占有を奪われたことにはならないため、占有回収の訴えは提起できない。


354条(動産質権の実行)
動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。

趣旨
本条は、競売をせずに質物を支払いに充てることを可能にする規定であるが、この場合は「正当な理由」が必要となる。正当な理由は以下の2つのようなケースが想定される。

1、競売をすると、競売にかかる費用の方が高くなってしまう。
2、競売をしなくても相場から評価額が判断できる。

このような場合、質権者はその理由で競売を行わずに質物から債権を回収できる手続きをとるように裁判所に請求することができるが、その前に、その旨を債務者に通知する義務がある。


355条(動産質権の順位)
同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。

趣旨
1つの動産に2つ以上の質権が設定されている場合は、早く設定をした質権者から債権を回収できる。

民法 物権 9章 質権 352条~355条




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