第3節 不動産質
356条(不動産質権者による使用及び収益)
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
趣旨
お金を貸して不動産を占有(預かっている)場合、その不動産を質権者は活用することができる。例えば、畑であれば農作物を作って収穫することができ、建物であれば他人に賃貸して家賃収入を得ることもできるが、いったん始めた活用方法は途中で変えることはできない。しかし近年では不動産を担保にお金を借りるときは、質権ではなく抵当権を使用することが殆どであることから、不動産質権が登場することは稀である。
357条(不動産質権者による管理の費用等の負担)
不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
趣旨
不動産の質権者は使用したり収益を得たりすることができるが、同時に管理や保存にかかる費用も負担する義務がある。
(修繕費や固定資産税等)
358条(不動産質権者による利息の請求の禁止)
不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。
趣旨
不動産の質権は利息を請求することはできない。使用及び収益が利息分に相当すると考えられているため。
359条(設定行為に別段の定めがある場合)
前3条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法第180条第2号に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。
趣旨
356条、357条、358条の規定が適用されないケースが2つある。以下の通り。
1、設定の際に356~358条と異なる契約をした場合。(年利1%が発生する等)
2、担保不動産収益執行の開始があった場合。(裁判所が選んだ管理人が、債務者の不動産を管理して、家賃などの収入から、抵当権者や質権者などの債権者が支払いを受ける制度)
360条(不動産質権の存続期間)
不動産質権の存続期間は、10年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、10年とする。
趣旨
不動産を質に入れておける期間は最長10年。契約で20年としても、本条が優先されるため、10年となる。
361条(抵当権の規定の準用)
不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。
趣旨
不動産に関する質権は、性質上、抵当権と類似する点があるため、抵当権の規定を使う場合がある。