民法 総則 5章 法律行為 99条~100条

第3節 代理

99条(代理行為の要件及び効果)
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

趣旨
代理人がその権限の範囲内で本人のためにすることを示しておこなった意思表示は、本人に対して直接にその効力を生じます。なお、「直接に」とは、法律行為の効果が代理人に帰属した後に本人に効果が帰属するのではなく、直接、当然に本人に効果が帰属することを意味します。

法定代理人と任意代理人
代理人には、法定代理人と任意代理の2種類があります。法定代理人とは、本人の意思にもとづかないで、法律によって代理権が発生する代理=法定代理によって代理権が発生する代理人のことです。任意代理人は、委任契約により、本人と代理人との合意により代理権が発生する代理人のことです。

代理人の権限について
代理人の権限は、法定代理人と任意代理人により、範囲がことなります。法定代理人の場合、その権限(代理権)の範囲は、法律によって決まっています。任意代理人の場合、その権限(代理権)の範囲は、委任契約の内容によって決まります。

顕名主義とは
本人のためにすることを示すことを「顕名」といいます。民法上、顕名があることが、有効な代理行為の要件のひとつです。このように、代理の要件として顕名を要することを「顕名主義」といいます。ここでいう「本人のためにすること」とは、本人に法律行為の効果を帰属させることであり、本人の利益のためにおこなうということではありません。このため、代理行為が結果的に本人にとって不利益になったとしても、その結果は本人に帰属します。なお、顕名のない意思表示は、代理人自らの意思表示とみなされます(第100条参照)。

②前項の規定は第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

2項趣旨
本項は、意思表示の代理受領について規定しています。
第三者が代理人に対して意思表示をおこなう場合、その第三者が代理人に対してではなく本人に対して効果を帰属させること示してその意思表示をおこなうことにより、本人に対して意思表示の効果が帰属します。このような代理を「受動代理」といいます。


100条(本人のためにすることを示さない意思表示)
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

趣旨
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、本人ではなく、その代理人のためにおこなったものとみなします。ただし、意思表示の相手方が、代理人が本人のために意思表示をすることを知り、または知ることができたときは、第99条第1項の規定を準用し、直接本人にその意思表示の効果が帰属します。

顕名主義とは
本人のためにすることを示すことを「顕名」といいます。民法上、顕名があることが、有効な代理行為の要件のひとつです。このように、代理の要件として顕名を要することを「顕名主義」といいます。ここでいう「本人のためにすること」とは、本人に法律行為の効果を帰属させることであり、本人の利益のためにおこなうということではありません。本条の規定により、顕名のない意思表示は、代理人自らの意思表示とみなされます。

みなし規定
本条はいわゆる「みなし規定」です。このため、本条が適用される場合は、たとえ代理人が本人のために意思表示をしていた場合であっても、代理人自らの意思表示として扱われます。後で「本人のために意思表示をした」ということを相手方に示した場合であっても、(たとえそれが事実だったとしても)覆すことはできません。

商法第504条による例外
商行為、つまり事業者同士のビジネスの取引の場合は、本条の例外として、商法504条が適用されます。このため、商行為の代理行為の場合は、本人のためにすることが示されていなかったとしても、その代理行為の効果は、本人に帰属します。ただし、意思表示の相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、その相手方は、代理人に対して履行の請求をすることができます。

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