民法 総則 5章 法律行為 101条

101条(代理行為の瑕疵)
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと、若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

趣旨
何についての欠陥かというと、本人のために代理人がする意思表示(能動代理)と、代理人が受ける意思表示(受動代理)です。おおざっぱに言うと、代理人が関わった意思表示の効力にケチがつく場合について定めるのが、民法101条です。意思表示をした人が、その時に意思がなかった場合や、意思がゆがめられてしまっていた場合などに、関係する人たちの中で誰を守ってあげるか、ルール化しているものです。民法101条1項が言っているのは、本人ではなく、代理人を基準にしろ、ということです。すなわち、代理人が相手方に対してした意思表示の効力が、

①意思の不存在(→心裡留保、虚偽表示など)
②錯誤
③詐欺
④強迫
⑤ある事情を知っていたこと
⑥ある事情を知らなかったことにつき過失があったこと

によって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決することになっています(民法101条1項)。代理人に意思がなかったのかどうか、代理人が騙されたのかどうか、代理人が知っていたかどうか・・・という風に考えるわけです。

「意思の欠缺」とは
本項における「意思の不存在」とは、いわゆる意思の欠缺(意思の不存在)のことをいいます。具体的には、心裡留保(第93条参照)通謀虚偽表示(第94条第1項・第94条第2項参照)錯誤(第95条参照)のことをいいます。これらの意思表示には、すべて真意が存在しないため、意思が存在しないという意味で、意思の欠缺または意思の不存在といいます。

「瑕疵ある意思表示」とは
本項における「詐欺、強迫」(第96条第1項・第96条第2項・第96条第3項参照)を総称して、「瑕疵ある意思表示」といいます。これらの意思表示には、騙された意思・脅された意思が存在します。これらは、不完全(=瑕疵がある)ではありますが、意思が存在します。このため、「瑕疵ある意思表示」といいます(第120条第2項参照)。なお、本項における詐欺・強迫は、代理人が相手方から詐欺・強迫を受けた際のことを想定している規定ですが、判例では、逆に代理人が相手方に対し詐欺・強迫をした場合も本項の規定を適用しています(大審院判決昭和7年3月5日)。

②相手方が代理人に対してした意思表示の効力が、意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと、又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は代理人について決するものとする。

2項趣旨
意思表示を受け取る場面(受動代理)でも、本人ではなくて、代理人を基準に考えるという意味です。

③特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても同様とする。

3項趣旨
代理人は事情を知らないけど、本人は事情を知っているというパターンはあり得ます。あとは、ある事情を知らないことについて、代理人には過失がないものの、本人には過失があるパターンとか。そういうのを想定して、民法101条3項は、例外的に、代理人ではなく本人を基準にする場合について定めています。
例えば、土地の売買契約の場合を想定します。
売買の対象となっている土地について、買主(本人)がその土地に土壌汚染があることを知っていて、代理人がその土地に土壌汚染があることを知らなかったとします。この場合において、代理人が土地に土壌汚染がないものと信じて売買契約を結んでしまったときは、本人は、後で土地の土壌汚染について、売主に対して、瑕疵担保責任(第570条参照)の追求ができません。

民法 総則 5章 法律行為 101条


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