民法 総則 5章 法律行為 113条~116条

113条(無権代理)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

②追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

趣旨
本条は、無権代理の契約は、本人が追認できることを当然に示しているが、追認をすれば、その代理権のない人が自分のためにした法律行為を自分に帰属させることができる。また、はっきり追認をしなくても、追認をしたとみなされる行為があった場合なども同様である。例えば、無権代理人がした契約の履行を本人が相手方に求めるなどの場合は、黙示の追認があったとみなされる。逆に追認をしなければ、その契約は無効や効果不帰属という形で処理される。

2項趣旨
追認や追認の拒絶は、本人が相手方にその意思表示を到達させなければその意思を主張することはできません。しかし、相手方が本人が追認することや、追認を拒絶することを何らかの形で知ったことが認められる場合は、意思表示がなくても主張が可能である。
また、本人が追認を拒絶した後で、無権代理人が本人を相続しても、無権代理行為が遡って有効になることはない。(最高裁平成10年7月17日判決)。


114条(無権代理の相手方の催告権)
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当に期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答しないときは、追認を拒絶したものとみなす。

趣旨
本条は無権代理行為の相手方を保護する目的である。契約後に、本人が認めるのか、認めないのかわからない不安定な状態を避けるために、相手方に与えられた権利。確答がない場合は、無権代理は本来、権利のない者がした行為なので、追認を拒絶したものとみなされる。(なかったことになる)
ちなみに、行為能力者になった「元・制限行為能力者」が催告に対して確答しない場合や、法定代理人が催告に対して確答しない場合には、追認したものとみなされる。


115条(無権代理の相手方の取消権)
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認しない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていた時は、この限りでない。

趣旨
本条は、前条と同様に、契約における不安定な状況から相手方を保護する目的である。本人が追認をする前に相手方が取消しを主張してきた場合は、その取り消しが優先される。これは、本人から追認権を奪う意思表示と解釈される。取消しの意思表示は、本人に対してでも、無権代理人に対してでもよい。しかし、相手方が無権代理の事実を知っていた場合は取消権の行使は認められない。この場合、本人は、相手方の悪意を立証する責任を負う。


116条(無権代理行為の追認)
追認は、別段の意思表示がないときは、契約に時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

趣旨
追認すると遡及効が発生する。(契約時からその契約による効果が発生する)しかし、例外として遡及効が発生しないパターンが2種類ある。
①相手方の同意や本人と相手方の直接の契約(別段の意思表示にあたる)
②この契約により権利を害される第三者がいる
上記の場合には遡及効は発生しない。

民法 総則 5章 法律行為 113条~116条


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