民法 物権 3章 所有権 212条~218条

212条
第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

趣旨
210条の規定により、通行権を取得した者は他人の土地を通行する際に生じた損害に対する償金を支払う義務が発生する。通行するための通路を設置するための費用は一括で支払うことができ、通行するための通行料は1年ごとに支払うことができる。


213条
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。

②前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

趣旨
1つの土地を分割して袋地ができた場合、その分割してできた他の土地しか通行することができないが、この場合は通行料を支払う義務は発生しない。

2項趣旨
1つの土地の一部を他人に売却することにより、その土地が袋地になった場合も前項同様に売却した土地しか通行することはできないが、この場合も通行料の支払い義務は発生しない。


214条(自然水流に対する妨害の禁止)
土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。

趣旨
自然に流れる水は高地から低地へと流れるが、低地の所有者は隣の高地から自然に流れてくる水を防ぐ措置をとることはできない。ただし、自然水流以外(隣の屋根から注ぐ雨水や排水等)はその土地、又は建物の所有者に流水を防ぐ措置をとるよう請求できる。


215条(水流の障害の除去)
水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。

趣旨
台風や地震などの天災による何らかの状況の変化により低地で水流がせき止められてしまった場合、高地の所有者は自分の費用でその流水をせき止めている原因を除去するための工事をすることができる。


216条(水流に関する工作物の修繕等)
他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせる
ことができる。

趣旨
近隣の土地に設置されている池や、貯水タンク、堤防、下水溝などが損傷や詰まりにより、自分の土地に被害が生じている、又は生じる危険性がある場合は、その設備のある時の所有者に対し、設備の修繕や除去、予防工事をするよう請求することができる。その際の工事費用はその設備のある土地の所有者が負担する義務を負う。


217条(費用の負担についての慣習)
前2条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。

趣旨
215条、216条に関する費用の負担は、その地域によって決められた慣習があれば、その慣習が優先適用される。例えば、A所有の土地にある貯水タンクが破損し、水が流れ出ている場合、Aが修繕費用を負担するのではなく、利用者全員で負担するという慣習がある場合など。


218条(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置禁止)
土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。

趣旨
これも当たり前だが、土地の所有者は、隣地に直接雨水が注ぐような構造の雨どいや、排水管などを作ること自体が民法で禁止されている。

民法 物権 3章 所有権 212条~218条







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