320条(動産保存の先取特権)
動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
趣旨
Aが車の修理をBに依頼して、修理が完了したが、修理代が未払いの場合、車の所有権がAから移転してしまうとその先取特権は効力を失ってしまうため、Aはその車の保存、権利の保存、承認、実行にかかった費用に先取特権を行使できる。
321条(動産売買の先取特権)
動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
趣旨
例えば、AがBに車を支払い期限付きで売った。しかし支払い期限が過ぎてもBからの支払いがない場合、Aはその売買代金と遅延損害金の利息に対して先取特権を行使できる。
322条(種苗又は肥料の供給の先取特権)
種苗(しゅびょう)又は肥料の供給の先取特権は、種苗又は肥料の代価及びその利息に関し、その種苗又は肥料を用いた後1年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種(さんしゅ)又は蚕(かいこ)の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。
趣旨
種や苗や肥料に使った費用はその素養から1年以内に収穫された天然果実に対して先取特権を行使できる。また、蚕の飼育に使った桑葉の費用は蚕から採れた糸に対して先取特権を行使できる。
323条(農業労務の先取特権)
農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の1年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。
趣旨
農業の賃金には、一般の先取特権に加えて、動産の先取特権もある農業の場合、最後の「1年分」の未払賃金については、自分が仕事中に
作った果実(農作物など)にも先取特権を行使できる。
324条(工業労務の先取特権)
工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の3ヵ月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。
趣旨
工業の賃金には、一般の先取特権に加えて、動産の先取特権もある工業の場合、最後の「3ヵ月分」の未払賃金については、自分が仕事中に作った製作物(製品)にも先取特権を行使できる。