第3款 不動産の先取特権
325条(不動産の先取特権)
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
1、不動産の保存(326条)
2、不動産の工事(327条)
3、不動産の売買(328条)
趣旨
解説については各条に登場するため割愛。
326条(不動産保存の先取特権)
不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に
関し、その不動産について存在する。
趣旨
不動産の保存、権利の保存、承認、実行には先取特権が付随する。
例えば、A所有の建物の修理をBに依頼し、Bがその修理を完了させたが、Aから修理代の支払いがない場合、その修理代に先取特権が付くのは当然だが、Aの所有でなくなるとBはその先取特権を行使できなくなるため、Aの所有であり続けさせるための保存の費用にも先取特権がある。その建物が時効により、第三者に所有権が移転しそうな場合は、その中断をかける場合の裁判や、弁護士費用、その手続きにかかった交通費等が挙げられる。
327条(不動産工事の先取特権)
不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
② 前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
趣旨
工事の設計料、施工料、監理料が未払いの場合、工事を契約した業者はその債権に対して先取特権を有する。
2項趣旨
工事によって発生した先取特権は、工事によって建物の価値が増加した分だけに行使することができる。(新築工事の場合は建物全体)
328条(不動産売買の先取特権)
不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。
趣旨
例えば、AがBに支払期限付きで土地を売ったが、期限が来てもBから支払いがない場合、Aはその売買代金と、遅延利息金を先取特権で回収することができる。