第4節 先取特権の効力
333条(先取特権と第三取得者)
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
趣旨
例えば、AがBに車の修理を依頼し、Bは修理を完了させた。しかしAは修理代を払う前にCに売り、その車を引き渡した。この場合、BはAに対して修理代を先取特権を行使して回収することはできなくなる。しかし、物上代位を行使すれば、Cが支払う売買代金から修理代を回収することができる。
334条(先取特権と動産質権との競合)
先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第330条の規定による第1順位の先取特権者と同一の権利を有する。
趣旨
動産質権者は330条1項1号の先取特権者と性質的に類似するため、同等の扱いとなる。
335条(一般の先取特権の効力)
一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
②一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
③ 一般の先取特権者は、前2項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
④前3項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
趣旨
一般の先取特権は「不動産以外」の財産から債権を回収し、足りなければその足りない分を不動産から回収することになる。
2項趣旨
不動産から一般の先取特権で債権を回収しようとするときは、特別担保(質権、先取特権、抵当権等)の付いていない不動産から回収し、足りない分は、特別担保の付いた不動産から回収する。
3項趣旨
競売された不動産から支払いを受けるための手続きに参加することを「配当に加入する」という。
例えば、A社が倒産し、その社員Bには50万円の未払いの給料がある。この場合、不動産以外の財産がA社にはなかったため、Cの抵当権がついた土地から支払いを受けるはずであったが、Bはその競売に参加する手続きをしなかった。こうなると、Cは抵当権を行使して100万の債権を回収したが、BはCに対して先取特権があるからといって50万を回収することはできない。
4項趣旨
先取特権が発生するような事由があった場合、不動産以外の財産や特別担保のない不動産から先取特権者が債権を回収する前に、特別担保の付いた不動産が競売にかけられることがある。その場合は、先取特権を有する者はいきなりその競売から債権を回収する権利を有する。