第5節(不在者の財産の管理及び失踪の宣告)
25条(不在者の財産の管理)
従来の住所又は居所を去ったもの(以下不在者という)がその財産の管理(以下この節において単に管理人という)をおかなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人不在中に管理人の権限が消滅したときも同様とする。
②前項規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求によりその命令を取り消さなければならない。
趣旨
本項は、管理人が置かれていない場合の不在者の財産管理について規定しています。従来の住所(第22条参照)または居所(第23条第1項参照)を去った者(=不在者)が、あらかじめ財産を管理する者(=管理人)を置かなかった場合は、家庭裁判所は、債権者や親族などの利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処置ができます。また、あらかじめ管理人を置いた場合であっても、本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同じように扱います。例えば、財産の管理に関する委任契約が終了した場合などが該当します。不在者が管理人を置いていない場合や管理人の権限が消滅した場合、親族や契約の相手方(=債権者など)などの利害関係人が困る場合があります。このような場合、親族や債権者は、不在者に無断でその財産などを処分することはできません。
民法では、不在者や管理人がいないからといって、利害関係者が勝手にその不在者の財産を処分することは、許されません(自力救済の禁止)。
このため、本項により、家庭裁判所が不在者の財産について必要な処分を命じます。家庭裁判所による
「必要な処分」とは主に財産管理人の選任です(家事審判規則第32条)。また、一般的には、家庭裁判所は、
財産の封印、財産の競売などもできると解されています。
2項趣旨
本項は、本人が管理人を置いた場合における家庭裁判所の命令の取消しについて規定しています。家庭裁判所は、第25条第1項の規定による必要な処分の命令後、不在者本人が財産の管理人を置いた場合は、その管理人、債権者や親族などの利害関係人または検察官の請求により、その命令を取り消さなければなりません。不在者が管理人を選定した場合、その後は家庭裁判所が関与する必要がなくなりますから、家庭裁判所は、必要な処分の命令を取消さなければなりません。
26条(管理人の改任)
不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
趣旨
本条は、管理人が置かれていた場合に不在者が生死不明となったときの不在者の財産管理について規定しています。不在者があらかじめ財産の管理人を置いた場合であっても、その不在者が生死不明となったときは、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、管理人を改めて選任することができます。管理人が置かれていた場合であっても、不在者の生死が不明となったときは、不在者による管理人の指揮監督ができなくなります。このように、不在者による管理人の指揮監督ができなくなると、その管理人による財産の管理が不適当となる可能性もあります。このような状態となった場合、家庭裁判所は、債権者や親族などの利害関係人または検察官の請求により、不在者の財産の管理について、よりふさわしい管理人を改任することができます。
なお、不在者の財産管理人は、
法定代理人の一種です。