民法 総則 2章 人 30条~31条

30条(失踪の宣告)
不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

②戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在ったものその他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死がそれぞれ戦争がやんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去ったあと1年間明らかでないときも、前項と同様とする。

趣旨
本項は、普通失踪について規定しています。
不在者が7年間生死不明の場合は、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます。人の生死は、その人の周囲の利害関係が大きく変動することになります。ところが、生死が不明の状態では、その利害関係が不安定なまま継続することになります。これは、特に、相続の開始(第882条)に関係してきます。不在者の生死がはっきりしない場合、相続人は、不在者の財産の相続を始めることができません。このような事態を避けるため、本項の失踪宣告制度により、一定期間の間生死が不明の場合、その者は死亡したものとみなされます(第31条参照)。

普通失踪・普通失踪期間
本項のように、第30条第2項に規定する特別の事情がない失踪のことを「普通失踪」といいます。また、本項でいう7年間の期間を「普通失踪期間」といいます。

利害関係人とは
本項における利害関係人とは、不在者の配偶者、親、子などの親族、受遺者などの不在者の死亡により利害が発生する者、保険金の受取人など、法律上の利害関係を有する者をいいます。

2項趣旨
本項は、特別失踪について規定しています。
戦地にいた者や、沈没した船舶の中にいた者、その他死亡するような危険に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が終わった後、船舶が沈没した後、またはその他の危険が去った後で、1年間その生死が明らかでないときも、第30条第1項と同じように、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます。本項のように、特別の事情による失踪のことを「特別失踪」といいます。また、本項でいう1年間の期間を「特別失踪期間」といいます。

戦地とは
本項における戦地とは、戦争がおこなわれている地域やおこなわれていた地域をいいます。当然、日本が外国から侵略を受けた場合は、日本が戦地となることもあり得ます。ここでいう、戦争には、国家間において宣戦布告がなされた国際法上の正式な戦争のみならず、武力紛争(いわゆる「事変」など)、国境紛争、地域紛争、大規模なテロなども含まれると考えられます。

死亡の原因となるべき危難とは
本項における死亡の原因となるべき危難とは、地震、津波、水害などの自然災害等が該当します。


31条(失踪宣告の効力)
前条第1項の規定により失踪の宣告を受けたものは同項期間が満了したときに、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けたものはその危難が去った時に死亡したものとみなす。

趣旨
本条は、失踪宣告の効力について規定しています。
第30条第1項の規定、つまり通常の失踪宣告を受けた者にあっては生死不明の期間が7年間満了した時に、第30条第2項の規定、つまり危機に遭遇した場合の失踪宣告を受けた者にあってはその危機が去った時に、それぞれ、死亡したものとみなします。前者の普通失踪の場合は、死亡した時期が推測できないため、直近の7年間が満了した時期に死亡したものとみなします。後者の特別失踪の場合は、死亡した時期は推測しにくいものの、少なくともその危機が去った時にはすでに死亡していた可能性が高いため、その危機が去った時をもって、死亡の時期とみなします。

みなし規定
本条は、失踪者を「死亡したものとみなす」、いわゆるみなし規定です。このため、失踪者が生きていた場合であっても、失踪宣告が取り消されるまで(第32条第1項参照)は、民法上、失踪者は死亡しているものと扱われます。

遡及効
失踪宣告があった場合は、その宣告があった時点ではなく、生死不明の期間が7年間満了した時または危機が去った時に遡って失踪者が死亡したものとみなされます。このため、生死不明の期間が7年間満了した時または危機が去った時から失踪宣告がなされるまでの間に失踪者に発生した法律関係は、無効となったり、失効したりする可能性があります。
民法 総則 2章 人 30条~31条


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