27条(管理人の職務)
前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合においてその費用は不在者の財産の中から支弁する。
②不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも前項の目録の作成を命ずることができる。
③前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
趣旨
本項は、家庭裁判所が選任した管理人の目録作成の職務とその費用負担について規定しています。
第25条第1項や第26条の規定により家庭裁判所が選任した不在者の財産管理人は、本項にもとづき、管理すべき不在者の財産の目録を作成しなければなりません。この場合、目録作成の費用は、不在者の財産から負担します。
2項趣旨
本項は、不在者の生死が不明な場合における不在者が置いた管理人の目録作成の職務について規定しています。
第27条第1項では、家庭裁判所が選任した管理人に課される目録作成義務を規定していますが、本項では、不在者が置いた管理人に課される目録作成義務について規定しています。不在者が置いた管理人であっても、本項にもとづく債権者や親族などの利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所から命令された場合は、管理すべき不在者の財産の目録を作成しなければなりません。
3項趣旨
本項は、家庭裁判所による不在者の財産管理の命令について規定しています。
第27条第1項や第27条第2項に定めるもの(=目録の作成)のほか、家庭裁判所は、不在者の財産管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができます。本項により、不在者の財産は、比較的柔軟に管理されることになります。
28条(管理人の権限)
管理人は第103条に規定する権限を越える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を越える行為を必要とするときも同様とする。
趣旨
本条は、管理人による財産管理の権限について規定しています。
不在者の財産管理人は、
第103条に規定する権限(不在者の財産を保存する権限や、不在者の財産の性質を変えない範囲で利用や改良をする権限)を超える行為を必要とするな場合は、家庭裁判所の許可を得たうえでそれらの行為をすることができます。逆にいえば、第103条に規定する権限の範囲内であれば、家庭裁判所の許可を得ることなく管理することができることになります。ただし、不在者との委任契約等により第103条に規定する権限に制限が課されている場合は、契約が優先される可能性もあります。ただ、不在者の生死が明らかでない場合において、委任契約等にもとづく管理人の権限を超える行為をおこなうときは、管理人は、家庭裁判所の許可をることにより、その行為をおこなうことができます。
29条(管理人の担保提供及び報酬)
家庭裁判所は管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
②家庭裁判所は管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から相当な報酬を管理人に与えることができる。
趣旨
本項は、管理人による財産の管理や返還の義務の担保について規定しています。
家庭裁判所は、管理人が不注意や怠慢な管理で不在者の財産を損なわないように管理し、確実に不在者に対し返還できるように、相当の担保を立てさせることができます。本項により、不在者の財産について、管理人が杜撰な管理をしたり、返還しなかったりするようなことを防止しています。なお、この担保の種類には、特に制限はありません。
2項趣旨
本項は、管理人による財産の管理に対する報酬について規定しています。
家庭裁判所は、不在者の財産管理人と、不在者との関係その他の事情を考慮して、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができます。なお、無報酬であった場合であっても、管理人は、不在者に対し、少なくとも費用は請求することができます(家事審判法第16条)。