第2節 先取特権の種類
第1款 一般の先取特権
306条(一般の先取特権)
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
1、共益の費用
2、雇用関係
3、葬式の費用
4、日用品の供給
趣旨
趣旨は各条にあるため割愛する。
共益費用(307条)
雇用関係(308条)
葬式費用(309条)
日用品の供給(310条)
307条(共益費用の先取特権)
共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
② 前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
趣旨
共益費用とは、債権者全員の利益のために債務者の財産に対してとった措置によって発生した費用のこと。
例1、保存 債務者の土地に不法占拠している者を排除するための裁判費用
例2、清算 債務者が破産した場合の財産整理費用(弁護士費用)
例3、配当 債務者への強制執行の実施費用
上記の措置は他の債権者にも利益があるので、その措置をとった者は他の債権者よりも先にその費用を回収する権利を有する。
2項趣旨
先取特権は、債務者に取った措置によって利益を受けない者(メリットがない人)に対しては使えない。
例えば、Aは、BCDから100万円ずつ計300万の債務がある。そしてAは300万円の土地(財産)を持っているが、Bだけがその土地に抵当権を持っている。この状況下で、AはEに土地を売却した。その後Aはその売買代金を消費してしまった。そこでCはAE間の売買を詐害行為取消権を使って取り消した。その裁判費用20万円(共益費用)はCが負担した。
さてこの場合、Cの措置により、利益を受けたのはDでBは元々抵当権があったのでCの措置がなくても100万円を回収することが可能であった。よって、Cの先取特権はBには存在せず、Dに存在する。債権回収の順番は以下のようになる。
1、Bは抵当権を実行して土地を競売にかけ、100万円を回収する。
2、Cは先取特権を実行してDより先に共益費用である裁判費用20万円を回収する。
3、残った180万円をCDで90万円ずつ回収する。