民法 物権 10章 抵当権 386条~391条

386条(抵当権消滅請求の効果)
登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。

趣旨
抵当権が消滅するタイミングを規定した条文である。消滅が成就する条件は以下の通り。

1、登記をしたすべての債権者がその請求を承諾すること。
2、第三取得者が債権者に支払いを済ませるか、その代金を供託すること。

支払いが完了した時点で抵当権は消滅する。


387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。

②抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

趣旨
例えば、A所有の建物に抵当権を設定してAがBからお金を借りており、その建物をCが賃借し、登記がされている。Cに賃借することをBは承諾しており、そのBの同意も登記されている。この状況でAは債務不履行となったため、Bは抵当権を実行し、競売によりA所有からD所有となった。この場合、Cは対抗力を備えているため、BやDの建物の明け渡し請求に応じる必要はない。

2項趣旨
前項の抵当権者の同意をするのに他の人の承諾を得なければならない場合があるが、「他の人」の例を挙げる。

1、抵当権者がその抵当権を担保にしている場合の後の抵当権者。(転抵当)
2、抵当権の同意により不利益を受ける者。(抵当権の譲渡を受けた債権者)


388条(法定地上権)
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

趣旨
土地と建物が抵当権の実行により、別の所有者になってしまった場合、建物の所有者に「地上権を法律で設定してあげることにしよう」という制度。法定地上権の成立要件は以下の4つ。

1、抵当権設定時に既に土地の上に建物が存在していた。
2、元々その土地と建物は同じ所有者だった。
3、その土地か建物の一方、又は両方に抵当権が設定された。
4、その抵当権の実行により、土地と建物の所有者が別々になった。

この場合、建物の所有者は地上権が与えられているため、建物を使用することができるが、裁判所が決めた土地代を支払わなければならない。


389条(抵当地の上の建物の競売)
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

②前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

趣旨
前条とは違い、土地に抵当権を設定した後に建物ができた場合は、土地の抵当権を実行する際に建物も一緒に競売にかけることができるが、抵当権者が優先的に弁済を受けることができるのは土地代のみで、建物の代金は他の債権者、いなけれれば本人に分配される。

2項趣旨
前項の一括競売ができない場合の規定である。抵当権設定前に、賃借権や地上権の登記があればその権利が優先されるため、一括競売はできない。


390条(抵当不動産の第三取得者による買受け)
抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。

趣旨
抵当権が付いた不動産を買った人でも、その抵当権実行による競売に参加することができる。


391条(抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求)
抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。

趣旨
抵当権付きの不動産を買った人が、その不動産を直したり、グレードアップしていた場合、その抵当権実行により競売が行われたらその競売代金からその修繕費や有益費を優先的に回収することができる。

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