民法 物権 10章 抵当権 398条の19~398条の22

398条の19(根抵当権の元本の確定請求)
根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する。

② 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。

③前2項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

趣旨
根抵当権設定者が元本の確定を請求する場合は、根抵当権を設定してから3年が経過すれば元本確定請求をすることができる。そして、その請求をしてから2週間が過ぎると元本が確定する。

2項趣旨
根抵当権者が元本確定請求をする場合は、いつでも請求をすることができ、請求をするとすぐに元本が確定する。

3項趣旨
契約時に元本の確定期日を定めた場合は、根抵当権設定者も根抵当権者もその確定期日が来るまでは元本確定請求をすることはできない。


398条の20(根抵当権の元本の確定事由)
次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。

1、根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第372条において準用する第304条の規定による差押えを
申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。

2、根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。

3、根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したとき。

4、債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。

②前項第3号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第4号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

趣旨
根抵当権の元本が確定する理由は以下の4つ。

1、その抵当不動産が競売にかけられる。担保不動産収益執行にかけられる。物上代位により差し押さえられる。(担保不動産収益執行とは、担保となる不動産の法定果実をその被担保債権の返済に優先的に充てることができる制度)

2、根抵当権者が債務者からの支払いがないため、抵当不動産に滞納処分の差し押さえを執行した。

3、第三者により根抵当権付きの不動産が競売にかけられた、又は滞納処分の差し押さえがあったことを根抵当権者が知った時から2週間が経過した。

4、債務者か、根抵当権設定者が破産した。

2項趣旨
元本が確定しなかったとみなされる場合が2つある。

1、前項の競売や差し押さえの効力が消滅した。
2、前項の破産手続開始決定の効力が消滅した。

例外 元本が確定した前提でその根抵当権を取得した第三者がいた場合、その第三者に対しては元本が確定していないことを主張できない。


398条の21(根抵当権の極度額の減額請求)
元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。

②第398条の16の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの1個の不動産についてすれば足りる。

趣旨
元本が確定した後であれば、設定者はその根抵当権の極度額を減額するように根抵当権者に請求することができるが、減額後の金額は以下の3つの合計で決める。

1、現在存在している債務の残額
2、2年分の利息などの定期金の総額
3、債務不履行による損害賠償額

例えば、A社の土地に1億円の根抵当権を設定してB銀行が融資を行っている場合、上記の1~3の合計額がその時点で7000万円であれば、A社はB銀行に対してその根抵当権を1億円から7000万円に減額するよう請求できる。

2項趣旨
共同根抵当の場合の減額請求は、複数ある不動産のうちどれか1つに減額請求をすれば、すべての不動産の根抵当に減額請求をしたものとなる。


398条の22(根抵当権の消滅請求)
元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。

②第398条の16の登記がされている根抵当権は、1個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。

③第380条及び第381条の規定は、第1項の消滅請求について準用する。

趣旨
例えば、A社の借金を保証するためにB社は自社所有の土地に極度額1億円の根抵当権を設定した。根抵当権者はC銀行である。その後元本が確定したが、A社の借金は1億2000万円であったが、B社がC銀行に極度額と同額の1億円を支払うか、供託をすれば、自社の土地についている根抵当権を消滅させるよう請求することができる。また、B社がその土地を根抵当権が付いている状態でD社に売った場合でも、D社も同じように、C銀行に極度額と同額の1億円を支払うか、供託をすれば、根抵当権消滅請求をすることができる。

2項趣旨
共同根抵当の場合、複数の不動産のうち、どれか1つの根抵当権が消滅すれば、すべての根抵当権が消滅することになる。

3項趣旨
根抵当権の消滅請求をできない人は抵当権の消滅請求をできない人と同じ。(380条、381条)

民法 物権 10章 抵当権 398条の19~398条の22


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