民法 物権 10章 抵当権 392条~394条

392条(共同抵当における代価の配当)
債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。

②債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

趣旨
一つの債権の担保として複数の不動産に抵当権を付けることを「共同抵当」という。例えば、Aは甲土地(4000万)と乙土地(2000万)の二つの土地を担保にBから3000万円を借りた。Aが債務不履行に陥り、抵当権を実行する場合、Bは甲土地から2000万、乙土地から1000万を回収することができる。このように土地の価格に応じて回収額を分割することを「按分」(あんぶん)という。

2項趣旨
前項の例を引用すると、Bは債権の全額を甲土地から回収することもできる。甲土地に2番抵当権者Cがいる場合はBが多く支払いを受けた分(1000万)を限度額として乙土地からBの代わりに債権を回収することになる。


393条(共同抵当における代位の付記登記)
前条第2項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。

趣旨
前条2項の例を引用すると、Bの代わりに乙土地から支払いを受けたいCは、乙土地の登記簿に「この土地からBの代わりに支払いを受ける」旨を登記することができる。Bは甲土地から全額債権を回収しているため、乙土地の抵当権を抹消する可能性がある。そうなると392条2項の制度が使えなくなるため、この代位付記登記をすることが重要である。また、第三者が出てきた場合でも、この代位付記登記があれば対抗できるため、債権回収の確率が高くなる。


394条(抵当不動産以外の財産からからの弁済)
抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。

②前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

趣旨
抵当権を実行して債権を回収する場合、抵当不動産の競売代金が債権額に足りない場合は、債務者の他の財産から足りない分を回収することができる。

2項趣旨
前項の場合、債務者の他の財産の方が先に競売にかけられる場合もある。この場合、その他の財産の競売にも抵当権者が参加できるということ。しかし、この競売により、一般債権者と分配した金額が後に行われる抵当不動産の競売により妥当ではなくなる場合があるため、その不公平を防ぐために一般債権者は抵当権者に対してその競売によって配当された金額を供託するよう請求することができるという制度。

民法 物権 10章 抵当権 392条~394条


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