8条(成年被後見人及び成年後見人)
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
趣旨
本条は、成年被後見人に対する成年後見人の付与について規定しています。
家庭裁判所からの後見開始の審判を受けた者(第7条参照)は、成年被後見人となり、これに成年後見人が付与されます。
なお、成年被後見人は、かつては「禁治産者」と呼ばれていました。
成年後見人は成年被後見人を保護する者
成年後見人は、成年被後見人を保護する(第9条参照)ために、民法上の権限を与えられる者です。
なお、成年後見人は、成年被後見人の財産の管理についての代理権を有しています(第859条)。
契約実務の点では、原則として常にその行為を取り消しうる成年被後見人との契約は、極めてハイリスクな契約であるといえます(詳細は第9条参照)。このため、契約実務上は、取消しのリスクがなく成年被後見人と取引をおこなうためには、成年被後見人の法定代理人である成年後見人を相手方として直接契約を結ぶことになります。
この点について、たとえ成年後見人の同意があったとしても、その契約は、取消すことができます。
このため、成年後見人の同意は、取消しのリスクには何の影響も与えません。
その意味では、成年被後見人との契約では、成年後見人が誰であるかを知ることが極めて重要となります。
9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消す事ができる。ただし、日用品の購入、その他日常生活に関する行為についてはこの限りでない。
趣旨
本条では、成年被後見人の保護のための具体的な規定として、成年被後見人の法律行為の取消しについて規定しています。
成年被後見人(第8条参照)がおこなった法律行為(=契約など)は、後で取り消す(第120条第1項参照)ことができます。
ただし、日用品の購入や、その他の日常生活に関する行為については取り消すことができません。
つまり、成年被後見人の法律行為は、日常生活に関するものを除いてすべて取り消すことができる、ということです。
本条は、物事を認識することができない成年被後見人を保護するための、具体的な条文になります。