第10章 抵当権
第1節 総則
369条(抵当権の内容)
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
②地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
趣旨
抵当権を設定した不動産については、その不動産の所有者が他に債務を有する場合、他の債権者より先に債権を回収できる権利を有するが、抵当権の最大の特徴として、質権は債権者が占有をしなければ発生しないが、抵当権は債権者が占有しなくても効力を有するという点。不動産に関しては抵当権の方が債務者にとってメリットがあるため、質権を使うケースは少ない。
2項趣旨
抵当権は、地上権と永小作権にも設定することができる。この場合、本章「抵当権」と同じルールになる。
370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。
趣旨
抵当権は、その土地や建物(抵当不動産)と一体となっている物(立木や石垣、庭石等)にも効力が及ぶ。ただし、付加一体物には効力が生じない場合が2つある。
1、契約の際に、付加一体物には抵当権の効力は及ばないと規定した場合。
2、付加一体物を債務者(所有者)操作し、債権者の不利益になるような行為を行った場合(詐害行為)。
371条
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
趣旨
例えば、AがB銀行から融資を受けアパートを建設した。そのアパートにはBの抵当権が設定されている。この場合、Bの抵当権は、建物に効力を生ずるのは当然だが、そのアパートの入居者の家賃(法定果実)にも効力が及ぶ。
372条(留置権等の規定の準用)
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。
趣旨
抵当権には、次の3つの条文が準用される。
1、留置権の不可分性
(296条)
2、物上代位
(304条)
3、物上保証人の求償権
(351条)